外陰部にできるイボである、尖圭コンジローマの原因は、
ヒト乳頭腫ウィルス(human papilloma virus :HPV)の感染です。
このHPVは、最近、子宮頸がんとの関係を指摘されていて、
何かと話題になっていますが、ここではまず、HPVの特徴から知っていただきましょう。
HPVは、比較的小型のDNAウィルスであり、それを構成する 皮膚に感染する皮膚型HPV
に 大別されます。 さらにこの2種のHPVには良性型・悪性型がそれぞれ存在します。 粘膜型HPVのうち子宮頸癌、肛門癌、外陰癌、膣癌、陰茎癌などの悪性腫瘍から分離されるHPVを中~高リスクHPV、または、発癌性HPVといい、尖圭コンジローマなどの良性乳頭腫から分離されるHPVを低リスクHPVといいます。 |
HPVは、性交歴をもつ女性の約60~80%に一生のうち少なくとも一度は感染するといわれており、そのほとんどの感染は一過性であり、感染しても、人間が本来持っている免疫力により自然治癒することが知られています。
しかし、HPVのうち、中~高リスクHPVの感染が長期におよんだ場合、平均10年以上の期間を経て、前癌病変から子宮頸癌に進行するおそれがあります。 近年、子宮頸がんについては、20歳代の罹患率の増加がみられていますが、これは活発な性行動が引き起こす、感染症としての子宮頸がんの側面を如実に表しているといえます。 また、現在、治療薬としての悪性型HPV感染に対する抗ウイルス薬開発の目途はたっていませんが、ワクチンの接種が海外において積極的に行われています。 ワクチンには、理論上、ウイルスの感染を予防する予防ワクチンとウィルス感染細胞やHPV関連腫瘍細胞を排除する治療ワクチンの2種類がありますが、結局、人類が選択したのは、予防ワクチンで、我が国でも近い将来、2価、又は4価のHPVワクチンが当たり前に打たれるようになるでしょう。 |
HPVが原因となる疾患で、それが、どのタイプのHPVによるものかを示してみます。数字は核型を表しています。
皮膚
|
日本での統計は、尖圭コンジローマとしての統計になるので、米国における数字を使ってみます。米国では、現在、およそ2000万人の人がHPVに感染しています。
性的にアクティブな男女の、少なくとも50%は、彼らの一生のうち、数回にわたって、HPVに感染します。(ここで感染してくるHPVは、約100種類の核型のうち、およそ、30種類のもので、これをGenital HPV:性器型HPVと呼ぶことがあります。)
特に、女性においては、50歳になるまでに、少なくとも80%の方が、この性器型HPVに感染するといわれています。
さらに、米国では、年間620万人の方が、新規にHPV感染症になっていきます。
性器に感染するタイプのHPVは、主に性器の接触によって伝播していきます。
ほとんどのHPV感染は、何のサインも徴候もなしに起こります。したがって、大部分の感染者は自分がHPVに感染していることがわかりません。なので、結果的にウイルスをセックスパートナーに、送り込んでしまうことになるのです。
また、妊婦がHPV感染者であれば、分娩時、赤ちゃんにHPVを送り込むことができます。ただし、赤ちゃんにHPV感染が成立することは、とてもまれです。これは、少し、安心材料といえるでしょうね。
少ない確率ではありますが、もし、赤ちゃんにHPV感染が成立すると、赤ちゃんの咽頭や喉頭にイボができることになります。
性器HPV感染症に罹っている大部分の人は、自分が感染していることを知りません。ウィルスは、皮膚、または、粘膜で生きていますが、通常、徴候を引き起こしません。
もちろん、一部の人達には、目で確認できる、性器のイボとしての症状や、子宮頚部、外陰部、肛門などの前癌病変としての変化が認められます。
この場合のイボとは、もちろん尖圭コンジローマのことです。また、HPV感染は、大抵、癌にまで至るということはありません。
性器のイボは、通常、柔らかく、湿っていて、ピンク色か肌色のふくらみとして、現れます。そして、盛り上がるか、平坦か、単発か、多発か、大きいか、小さいか、カリフラワー状の形状を呈するか、呈さないか、といったことで、その外見を決定づけていきます。また、それらは、膣口や肛門付近の外陰部、子宮頚管、ペニス、陰嚢、ソケイ部、腿などに出現します。
こういったイボは、感染者との性的な接触の後、数週~数ヶ月以内に現れるといわれていますが、全く出現しないこともあります。
性器のイボは、視診によって診断されるのが普通です。治療は、外用薬(5-FUやポドフィリン)を塗布する方法と、レーザーや電気メスなどの機器を用いて、切除したり、蒸散させてしまう方法があります。また、これらの治療に、その患者さん自身のイボに対する免疫を上げるため、内服薬を加えることもあります。(中には静観を決め込んで、自然脱落するまで待つ、なんていう方法もあるにはありますが、いかんせん、かなり時間がかかってしまいます。自分の体内でHPVに対する抗体が産生されなければ、ほんとの意味で治癒したとは言えないので、方法論としては正しいと言えるのでしょうが。。。)
女性のHPV感染者の大部分は、性器のイボからではなく、子宮膣部及び頸管の細胞診(PAPテスト)の異常所見から、その診断に至ります。
PAPテストは、一般に、子宮頸癌やその前癌病変のスクリーニングに用いられる、最もすぐれた方法です。そして、これらの疾患の多くは、HPVとの関連が認められるため、PAPテストの所見の読み取り方によっては、HPVのスクリーニングにもなるわけです。(もちろん、熟練した、病理医においては、ヘルペスウィルスやクラミジアの診断に至ることもあります。)また、PAPテストによって、HPVが陽性でありそうだという診断のついた女性には、HPVのDNA検査を加える加えることによって、より精度の高い診断が可能になります。(ただし、現段階においては、PAPテストもHPV/DNAもあくまで、女性のための検査で、男性には、方法が適さないとされています。)
残念ながら、HPV感染そのものに対する治療法は、ありません。しかし、大部分の女性(たぶん男性も)において、HPV感染はひとりでに勝手に治ってしまいます。(もちろん、フォローは必要ですが)このことから、治療の対象となるのは、HPVが原因だと考えられる性器のイボや、子宮頸部の前癌病変や癌ということになり、決して、本病原体であるHPV本体に対してではないことを覚えておいて下さい。
様々なHPVは、まず、PAPテストに軽い異常を引き起こします。さらに、性器型HPV約30種のうち、10種程度ある、子宮頸癌関連
HPVが感染した場合には、PAPテストはもう少し、異常の程度を強めることになります。
ただ、たとえそうであったとしても、大部分の方(90%)のHPV感染は2年以内に、検知されなくなります。そうならなかった方は、持続性のHPV感染といえるのだけれど、それが、高リスクHPV感染であった場合、初めて、子宮頸部癌の主な危険因子となりえるのです。
PAPテストは、子宮頚管上皮において、前癌状態や癌状態にある細胞を見つけ出すことができます。定期的なPAPテストと、必要に応じて治療を行うといった医学的なフォローアップは、HPV感染によって起こっている、前癌病変を、生命を脅かすであろう子宮頸癌に発展するのを確実に防いでくれる方法です。
米国では年間、約1万人の女性が、浸潤性の子宮頸部癌になっていきますが、そのうち、3900人余りの方が、この疾患で、命を落とします。この、浸潤性の子宮頸部癌になる、大部分の女性は、定期的なPAPテストを行っていなかったという統計があります。
サイズ | 北海道 | 北東北 | 南東北 | 関東 | 信越 | 中部 | 北陸 | 関西 | 中国 | 四国 | 九州 | 沖縄 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
60 | 1339 | 1015 | 907 | 907 | 907 | 907 | 907 | 1015 | 1123 | 1123 | 1339 | 1339 |
性器型HPVの存在をチェックします。中高リスクグループと低リスクグループのどちらかを選択していただきます。